更新日:2026-10-21。状態:プロジェクトの目的と研究方針。以下の性質を実現・証明済みという意味ではありません。
最終目標
未来永劫、原理的に変化に耐えうる医療コード体系を確立すること。
医学的知識、扱う概念、記録の目的、制度、利用者、システム、AI が変化しても、それらを表現・拡張でき、既存の記録や概念の意味を追跡できる体系を目指します。特定の既存コードへの変換を、このプロジェクト全体の成功条件にはしません。
目的の階層
| 位置付け | 内容 |
|---|---|
| 最終目標 | 将来の変化を原理的に受け止められるコード体系そのものの確立 |
| 基礎研究・設計 | 何を変化として扱い、何を保つかを定義し、表現・意味・拡張・互換性の仕組みを設計する |
| 中間目標 | 既存体系の表現、コード移行支援、意味の保持・喪失・追加の監査を通じて設計を検証する |
| 応用・普及 | 臨床ライブラリの整備・標準化、医療者の操作と接続先の分離、AI が利用・検証できる情報整理 |
医療者と AI の利用は、基盤設計の初期要件として扱います。応用の実装を後に行うことを理由に、内部表現を当面の移行先や特定の AI の都合へ固定しません。
移行支援の試作が有用でも、それだけで最終目標を達成したとは判定しません。逆に、一つの移行例で利点が出ない場合は、例・実装・表現原則を見直し、プロジェクトを直接変換ツールへ置き換えて完了とはしません。
応用目標:入力と出力先の分離
医療者の入力・操作を「フロントエンド」、会計コードや各種分類コードなどの出力先への接続処理を「バックエンド」と捉えるアナロジーで、臨床ライブラリを通じた分離の目標を説明できます。ここでは、医療者が扱う臨床上の内容と、接続先固有の規則を適用する処理という責務を分けます。
flowchart TD
A["医療者の観察・判断・実施内容の入力"] --> B["臨床ライブラリ"]
B --> C["版付きの意味・文脈・時点・由来・確認状態を保持する共通表現"]
C --> D["出力先の体系・版・用途に応じた接続処理"]
D --> E["会計コード・各種分類コード"]
D --> F["記録システム・研究・AIでの利用"]
共通表現で臨床上の意味を保持し、接続先の変更に応じて出力側の規則・対応を更新することで、医療者の操作を維持できる範囲を広げることを目指します。各出力で保持・喪失・追加される情報と、その根拠や未対応も追跡します。
操作を維持できる条件は、入力と根拠付きの補助情報で、出力先が要求する情報を満たせることです。別の情報源を使う場合は由来と確認状態を残し、新たな観察や判断が必要なら追加確認を求めます。未記録の情報を推測して確定し、操作を変えずに対応できたとは扱いません。
これは既存の「応用・普及」の目標を説明するもので、最終目標や中間目標の位置付けを変えません。臨床ライブラリと接続処理の実装・標準化、および操作を維持できる範囲の実証は、引き続き検証対象です。
応用目標:AI の候補生成と決定論的な検証の分業
AI が自然言語から候補を抽出・生成する役割と、版付きの構造化表現に対して明示した規則を検査する役割を分けます。これは、ニューラルな処理と記号的な処理を組み合わせるニューロ・シンボリックの観点から説明できる応用構想です。MedDSL の中間層を、そのうちの宣言された範囲で決定論的に検証し、未対応・不足・矛盾を返す境界として位置付けます。現在の試作を、臨床 LLM と接続した完成済みのシステムとは扱いません。
工学的には、半導体設計の EDA で設計候補とルール検査を分ける考え方に対応付けられます。DRC による宣言済みルールの検査、LVS による参照回路との比較を手掛かりに、入力候補、意味・参照・制約の検証、出力先ごとの射影、情報の保持・喪失・追加の監査という責務を説明します。対応表・一次資料・アナロジーの限界は ニューロ・シンボリック/EDA の工学アナロジー に記録します。数学的な完全同型や、この構成だけが可能だという証明ではありません。
医療者が規格改定や出力形式の都合による反復的な修正に費やす負担を減らし、観察と臨床判断に集中できることを目指します。検査可能な形式・参照・数値境界は機械で扱い、AI 由来、原情報、採用した規則と版、追加した仮定を保持します。左右の記載が形式上妥当でも実際の観察と一致するとは限らず、医学的な制約は根拠・適用条件・版を定めて別に検証します。新しい観察・判断が必要なら、その不足と必要な確認を返し、臨床内容を黙って補正・確定しません。
この説明は既存の AI 利用・入力と出力先の分離という応用目標を補足します。最終目標、目的の階層、研究の進行順序は維持し、AST・グラフ等の表現形式や推論器をこのアナロジーから確定しません。
最初に定義すること
「変化に耐える」の意味を研究対象として明確にします。以下は要件の候補で、最終的な形式や実現方法は未決定です。
| 変化 | 保ちたい性質・検証する問い |
|---|---|
| 新しい概念・属性・関係の登場 | 既存体系の分類枠に無理に押し込めず、意味を定義して追加できるか |
| 新しい表現形式や領域の登場 | 文法・型・概念モデルのどこを拡張すればよく、その手順を体系として定義できるか |
| 医学的な定義・知識の修正 | 過去の定義と現在の定義を区別し、何が改訂されたか追跡できるか |
| 用途・制度・地域の違い | 同じ事象に対する複数の分類・記録・会計上の見方を分けて表現できるか |
| 記録の訂正・撤回・不一致 | 当初の記録と後の判断、異なる主体の主張を混同せず扱えるか |
| 実装・機器・AI の変更 | 特定製品や表示形式に意味を依存させず、別の実装でも解釈と検証ができるか |
| コア仕様自体の改訂 | 変更が必要な場合の互換性、旧記録の解釈、情報の保持をどう規定するか |
既存の意味を保存することと、新しい知識に基づく判断へ更新することを両立する方法を調べます。過去に記録された主張を保持することは、その主張を現在も真と扱うことではありません。
設計を導く原則
- 特定のコード体系、国、制度、診療科の分類枠を普遍的な基礎と決めつけない。
- 識別子、概念の意味、記録上の主張、情報源、表示名、外部体系への対応を分けて定義する。
- 拡張の方法と、何が変わらないべきかを、個々の接続先の実装より先に検討する。
- 新たな意味を定義できたことと、未解釈のコードや文章を保存できたことを区別する。
- 比較不能や未対応は正直に報告し、それを意味の網羅性を達成した証拠には使わない。
- 既存の規格・論理・モデル・実装は、最終目標に必要な性質を満たすために評価・再利用する。
- 素のコードや DSL の手入力を医療者に要求せず、臨床ライブラリ・画面・AI との境界を設ける。
コアをどこまで固定するか、拡張をどの表現能力で受け止めるか、コア自身の改訂をどう扱うかは基礎研究で比較します。「改訂を管理できれば普遍性を達成した」とも、「すべての定義を初めから列挙しなければならない」とも、現時点では決めません。
原理と実証の分担
最終目標の「未来永劫」は研究の方向を定める要求です。根拠の提示は、対象とする変化、仮定、保つ性質を明示して行います。
| 根拠の種類 | 確かめること |
|---|---|
| 形式的な検討 | 定めた前提の下で、拡張・意味保存・互換性等の性質が成立するか。必要な制約や反例は何か |
| 実証・実験 | 異なる領域・体系・将来変化の模擬例で、設計どおり表現・拡張・解釈できるか |
| 運用評価 | 医療者の操作、実装間の適合、知識更新、AI 利用で、意味と根拠を保持できるか |
有限の実験結果を未知の全変化への保証と同一視せず、形式的に示せた性質と経験的に確認できた範囲を分けます。最終目標は維持したまま、到達した範囲と未解決の点を記録します。
研究の次の優先事項
R2b の基礎調査 で、変化の分類、不変条件、固定した基礎言語・拡張可能なメタモデル・改訂可能なコアの三案を整理しました。R4 の評価設計に続き、R5 で三案を比較し、更新の種類ごとに定義追加・意味モジュール・コア改訂の契約を使う構成を研究用に選びました。
保存原理の検討 では、条件内の旧意味の保存、有限回の合成、関係表から役割付き事象への意味引き継ぎを手作業で導出しました。主張の履歴と現在の採用判断も分けます。これらは永続性全体の証明ではなく、未知の意味の導入・異なる意味論間の接続は引き続き研究課題です。
R3 の利用条件を維持し、P0-a〜d、P1-a の有限予測、P1-b の事象への引き継ぎに続き、P1-c でモデル被覆の反例と限定した合成の認定を実装しました。次は P1-d の総合評価です。現在の結果は架空草案・既知条件による検証で、独立確認、任意の意味の認定、全体の実行評価、長期保存・再解釈、未見版・未見体系への実証を残し、目標の達成とは区別します。